これは小さい頃、秋田にある祖母の実家に帰省した時の事である。
年に一度のお盆にしか訪れる事のない祖母の家に着いた僕は、早速大はしゃぎで兄と外に遊びに行った。
都会とは違い空気が断然うまい。僕は爽やかな風を浴びながら、兄と田んぼの周りを駆け回った。
そして日が登りきり真昼に差し掛かった頃、
ピタリと風か止んだ。と思ったら、気持ち悪いぐらいの生緩い風が吹いてきた。
僕は「ただでさえ暑いのに、何でこんな暖かい風が吹いてくるんだよ!」と、
さっきの爽快感を奪われた事で、少し機嫌悪そうに言い放った。
すると兄は、さっきから別な方向を見ている。その方向には案山子(かかし)がある。
「あの案山子がどうしたの?」と兄に聞くと、兄は「いや、その向こうだ」と言って、ますます目を凝らして見ている。
僕も気になり、田んぼのずっと向こうをジーッと見た。
すると、確かに見える。何だ…あれは。
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