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近年、子どもを幼い頃から学習塾に通わせ、有名私立学校に入学させるために奔走する教育熱心な親が多いようです。
「小学校の授業はレベルが低くて子どもに何の役にも立たない」という親もおり、同様の回答が多数を占めるアンケート結果もあります。
そのような親御さんたちを対象に、大手学習塾による入塾説明会が各地で行われていますが、これから紹介するのは、ある大手学習塾の入塾説明会であった話です。
大勢の子どもたちの親と塾講師への質疑応答の際に、一人の母親が「小学校の授業なんか役に立たないし意味はないと思っている」と発言した事から始まりました。
それまでにこやかに対応していた塾講師の顔から笑顔が消えました。
しかし直後、その塾講師は、決して感情的にならないゆっくりとした口調で語り始めたのです。
「前提として、これはあくまで私個人の見解という事をご理解ください。子どもが小学校の授業を受ける意味などないという事ですが、私はそうではないと思います。子どもにとってどんな教育が必要なのかを今一度考えてみてください。」
「本日の入塾説明会にいらしている皆さんは、子どもの成績をどんどん伸ばし、レベルの高い学校に入れさせる事が良い教育であると考えておられる事でしょう。もちろん、私どもの塾も子どもたちの成績を伸ばし、良い学校に合格させる事を目的にしていますので、それが最も重要であると考えているのは言うまでもありません。」
「しかし、塾と学校は大きく役割が異なります。塾の役割は、試験やテストの成績を伸ばす事で、そのためのカリキュラムを組んでじっくり勉強を教えます。しかし学校は、試験やテストの成績を伸ばすだけではなく、『人間的な成長機会』を与える場所なのです。」
「学校も立派な社会です。その中に生きる事で人と調和しながら生きる事を学び、規則の中で生活する事で秩序の成り立ちを学ぶ。人の気持ちを感じ、喜び、怒り、哀しみ、楽しむ毎日の中で仲間ができ、これからの社会を生きていくのに必要な『自我』、一人の『人間』を作る場なのです。」
「極端に言えば、子どもの頃のテストや試験の点数は、これからの社会を生きる上で何の役にも立ちません。皆さんも子どもの頃のテストの点数が今の生活に左右されていると思われますか？しかし自我というのは必ず人間の根底になります。人に優しく、社会に優しく人を受け入れながら生きる事、これが出来るか出来ないかで子どもの将来は大きく異なって来るものです。」
…まるでその場の空気を一つにするように、その場にいた親御さんたちを惹き付けるように、淡々と語る塾講師。
その言葉からは、子どもたちの事を真剣に考えているからこその『重み』が伝わって来ました。
「皆さんが子どもを良い学校に入れたい、試験の点数を伸ばしてあげたいという気持ちは私にもよくわかります。しかしそれ以上に子どもの人間性を伸ばす事も重要なのです。」
「この塾では、試験やテストの点数を伸ばす事に全力で取り組みます。でも数字だけで子どもの成長を判断するのではなく、人間としての成長を見て学校と協力しながら子どもたちを育てていってほしいと思います…。」
…塾講師が話し終えると、その場にいた親御さんたち全員が、大きな拍手で講師の話に応えました。
質問をした母親の方も先程までの感情は消え、大きく共感したように『ありがとうございました。私も頑張ります』と答え、質疑応答は終わります。
この塾講師の『神対応』に、ネット上にも声が寄せられています。
「成績よりも大事なもんは、世の中なんぼでもあるんやでえ」
「これこそ本当の教育者ではないでしょうか!!」
「子どもの事を真剣に考えているから言える言葉ですね。親御さんや学校の先生も同様に考えているのでしょうか？？」
「試験で点を取る能力は受験まで、それが通用する世界はない」
しかし中には…
「塾の先生だからみんな納得したんだろうけど、これが学校の先生だったら納得するかな？」
という声もありました。
まるでかつての学園ドラマのワンシーンを思い出させるような話ですが、批判的な親御さんまで納得させる、自身の立場を超えたこのような方が、教育する人として存在するのはとても心強い事でしょう。
学校の本当の役割そして親の役割とは何なのかを再認識出来た、塾講師の話でした。
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