雪解け近い3月になると、クロアチア東部にあるブロドスキバロス村の人々の視線は、ある家の屋根の上に作られた大きな巣に集中します。
その巣の中で静かに過ごしているのは、メスのコウノトリ『メレーナ』。
彼女は、毎年春に遠い南の地から戻って来る最愛のオス『クレペタン』の帰りを、今か今かと待ち続けているのです。
そして村の人々も、彼の帰りをじっと目を凝らして待ち続けているのです。
雪解け近い3月になると、クロアチア東部にあるブロドスキバロス村の人々の視線は、ある家の屋根の上に作られた大きな巣に集中します。
その巣の中で静かに過ごしているのは、メスのコウノトリ『メレーナ』。
彼女は、毎年春に遠い南の地から戻って来る最愛のオス『クレペタン』の帰りを、今か今かと待ち続けているのです。
そして村の人々も、彼の帰りをじっと目を凝らして待ち続けているのです。
クレペタンとメレーナのコウノトリの夫婦が村にやって来たのは、もう16年も前の事。
コウノトリは、寒さが厳しいクロアチアで冬を過ごす事が出来ないため、毎年夏の終わり頃になると、遠い遥かな南アフリカの地へ渡ります。
もちろんクレペタンも他の仲間たちと共に南へ行くのですが、メレーナは彼らといっしょに飛んで行く事が出来ません。
昔、銃弾に羽を撃たれた彼女は飛ぶ事が出来なくなってしまい、この村から外へ出る事すら叶わなくなってしまったのです。
しかしクレペタンは何年たってもひたすらにメレーナを愛し続け、忘れた事がありません。
夏の終わりの日に飛び立ち、3月には必ずメレーナのいる巣に約束どおり戻って来るクレペタンを、村の人々は毎年首を長くして待っています。
昨年は「約束の日」よりも少し遅れて帰って来たクレペタンでしたが、メレーナは彼をいつもどおり優しく温かく迎えます。
遥か南アフリカからアラビアの大砂漠を越えてメレーナの元へ帰って来る、実に12000kmにも及ぶ長旅がどれだけ大変なのかを、メレーナは知っているのでしょう。
『二人の愛の巣』が作られた家主のヴォキッチさんも、少し遅れながらも帰って来たクレペタンの姿にひと安心の様子。
ヴォキッチさんは、巣を目がけてまっすぐに飛んで来る姿に、それがクレペタンであると瞬時に分かりました。
ヴォキッチさんは毎年、クレペタンとメレーナ夫婦の再会の日に合わせて、いつもバケツ一杯の魚を手に待っています。
このコウノトリ夫婦の物語は、世界中の人々に感動を与えています。
こちらは、クレペタンとメレーナの物語を描いたアニメーションです。
クレペタンとメレーナはこれまで40羽もの子どもを育て、大空へ旅立たせました。
その子どもたちに飛び方を教えるのもクレペタンの役目です。
専門家によると、コウノトリが結婚相手、つまり番(つがい)を変えないというのは非常に珍しいケースで、しかもオスとメスの関係が16年も続くというのも、通常では考えられないとの事です。
お互いを決して忘れず心から尊重し合う愛というものは、長い年月も日々も距離も超えてしまうのでしょうね。
そして何と言っても大きいのは、この『二人』の再会の日をいつも待ちわびて歓迎する村の人々の優しさです。
かつて大きな戦乱を経験し多くの命が失われたクロアチアの人々は、世に生きる命の輝きを何よりも大切にしているのでしょう。
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