出典: seniorguide.jp
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複数の医療機関で処方された薬の情報を一冊の手帳にまとめて記載することで、
薬の相互作用や重複投与による健康被害を防ぐことを目的に作られた。
きっかけは1993年10月に起きたソリブジン事件だ。
抗がん剤投与中の患者が、帯状疱疹の治療薬・ソリブジンを服用したところ、
薬の相互作用によって複数の死者、重症者を出すという出来事が起こった。
薬は、正しく使えば病気やケガの回復を助けてくれるが、
飲み合わせが悪かったり、用量を間違えたりすると、
思わぬ健康被害を招くことがある。
この事件を機に、一部の大学病院や調剤薬局で、
患者が服用している薬剤名などを手帳に書いて、情報提供するようになったのだ。
当初は無料のサービスだったが、医療費削減効果などが期待されて、
00年に国の制度になり、薬局でおくすり手帳に薬剤情報を記載してもらうと、
一定の料金がかかるようになった。
もしもこう思っているなら、それは間違った情報だ。
実は、2016年度の調剤報酬改定で、
薬局におくすり手帳を持参すると医療費が安くなるように見直されたからだ。
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だが、薬局でもらう領収書や明細書を見ても、
どこにも「おくすり手帳代」とは書かれていない。
おくすり手帳への情報提供の報酬体系はわかりにくいが、
実は「薬剤服用歴管理指導料」という項目に含まれている。
これは薬剤師による服薬指導の料金で、
残薬の確認や後発医薬品の情報提供などとともに、
おくすり手帳に薬剤情報を記録することが算定要件になっている。
16年3月までの薬剤服用歴管理指導料の患者負担は、
おくすり手帳への情報提供が「あり」の場合は120円(3割負担の場合、以下同)。
「なし」だと100円で、手帳を断ったほうが医療費の自己負担は20円安くなった。
そのため、薬局でおくすり手帳を断る患者が続出してしまったのだ。
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だが、おくすり手帳は、薬剤による健康被害を防ぐ重要なアイテムだ。
東日本大震災や熊本地震の被災地でも、
おくすり手帳を持っていた被災者は避難所などで
スムーズに診療や投薬ができた事例が数多く報告されている。
また、国は国民におくすり手帳を持ってもらうことで、
残薬をなくして医療費を削減したいと考えている。
そこで、患者のメリットを考慮して、昨年度の調剤報酬改定で、
薬局に手帳を持参すると医療費が安くなるように見直したのだ。
現在、一般的な調剤薬局(調剤基本料1、または4を算定している薬局)では、
過去6カ月以内に利用した薬局に再度おくすり手帳を持っていくと110円、
はじめて行った薬局やおくすり手帳を持っていない場合は150円。
つまり、利用する薬局を1カ所に決めて、毎回同じところに手帳を持参すると、
1回あたりの薬代を40円節約できる。
ただし、大病院の前で営業している門前薬局、
チェーン展開している薬局など、
特定の医療機関から出された処方箋を
一定枚数以上受け付けている薬局に行った場合は、
おくすり手帳を持参してもしなくても料金は変わらない。
とはいえ、持参しても医療費が高くなるわけではない。
最近は、「おくすり手帳アプリ」にも対応できる薬局が少しずつ増えている。
自分の健康と家計を守るために、おくすり手帳の携帯を習慣にしたいものだ。
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