ご飯やパンなどの
炭水化物の摂取量を制限する
「糖質制限食」を
ダイエット目的で
実践する人が増えているようです。
しかし、糖質(炭水化物)が
分解されてできる
ブドウ糖は脳にとって
唯一のエネルギー源です。
むやみに減らせば当然
脳に悪影響があります。
糖質制限食の是非を
くどうちあき脳神経外科
クリニックの工藤千秋院長が
脳神経外科の観点から説明します
出典: sites.google.com
一定の糖質制限が
必要な人たちがいます。
代表的な例が
血中のブドウ糖濃度(血糖値)が
高くなる糖尿病患者です。
中でも、食事を含む生活習慣が
発症に大きく関わっている
2型糖尿病患者は
糖質摂取量を抑える対応が必要です。
血糖値の高い状態が長く続くと
次第に血管が障害されます。
細い血管が障害されると
失明の危険がある網膜症
人工透析が必要になることもある腎症
手足の感覚がまひする
末梢(まっしょう)神経障害などが
起こります。太い血管が
障害されると
脳梗塞(こうそく)や
心筋梗塞といった直接命を
脅かす病気も起きやすくなります。
ただし、いくら糖尿病であっても
糖質制限が行き過ぎると
逆に問題が起こります。
糖尿病患者は血糖値を
下げる血糖降下薬を
服用している場合が
少なくありません。
近年、血糖降下薬の服用時には
血糖値が下がりすぎる
低血糖発作を起こさないように
することが重要視されています。
低血糖を起こしている
高齢者の糖尿病患者は
糖尿病にかかっていない人と
比べて、アルツハイマー型認知症発症の
危険性が約1.6~2.4倍に
なることも分かってきたのです。
脳細胞は加齢とともに減少します。
糖質が脳のエネルギー源
であることから考えれば
脳細胞が減少している
高齢者の場合は
若者よりも低血糖が
脳にダメージを与え
それが認知症につながるという
理論は極めて妥当です。
最近は、健康な若年~中年層で
ダイエットを目的に極端な
糖質制限を行っている
人もいるようです。
しかし、全く糖質を取らない方法は
お勧めできません。
極端な糖質制限で
体内のブドウ糖の量が
低下すると、ヒトの体は
脂肪や筋肉を分解することで
糖質を作り出しそれを
エネルギー源にします。
これを糖新生と呼びます。
確かに、脂肪や筋肉が
分解されればダイエットは
できるでしょう。
しかし、糖新生はあくまでも
非常措置です。停電時に
自家発電機を稼働させるのと同じです
自家発電機を動かすには燃料が必要です。
緊急事態を乗り切るために
脂肪や筋肉を燃料に
変えているわけですから
長期間続ければ
当然体に異常が生じます。
脳の働きは鈍り
めまいや冷や汗が止まらなくなり
最悪の場合は低血糖発作で
意識を失ってしまいます。
実際、糖質制限による
低血糖発作で病院に
救急搬送されたという
事例も時折耳にします。
高齢者が極端な糖質制限食を行うと
若者と比べて一層危険が増大します。
高齢者の多くは筋肉量が
低下しています。
極端な糖質制限による
糖新生が起きた場合
筋肉量はさらに低下し
著しく心身機能が低下した状態の
「フレイル」に陥りやすくなります。
「フレイル」になると
そうでない人と比べて
死亡率が上昇したり
風邪をこじらせて命の危険を
伴う重度の肺炎にかかりやすくなったり
日常動作で転倒・骨折の
危険性が増大したりするなどさまざまな
悪影響が起こります。
1日に必要なカロリー摂取量は
年齢や活動性、病気の有無などに
よって異なります。
しかし、カロリー摂取量の
約6割は糖質から摂取することが
望ましいとされています。
これは糖尿病の患者も同様です。
具体的にいうと健康な人の場合は
茶わん1杯分のご飯を
1日3回食べるのが最も適切です。
活動量の低下している
高齢者ならば1日に
2杯程度でも構いませんし
活動量が多い若年者なら
もう少し多くても
食べ過ぎとはいえません。
やや肥満傾向がある人ならば
心持ち減らすのがいいでしょう。
いずれにせよ、昨今の
糖質制限食ブームに対しては
「過ぎたるは及ばざるがごとし」
ということを強調しておきたいと思います。
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