お客さんの荷物を指定時間内に
確実に届けなくてはならない
長距離トラックの運転手さん。
運転してるだけなんだから楽じゃない?
気楽そうで良いな。 など
「楽」そうなイメージを持った人が多いのが現実・・・
しかし、
荷物を「指定の場所」に「指定の時間」に届ける
ということは、何があっても守らなければならない「ルール」なんです。
たとえ、嵐であろうが、大雪であろうが荷物を確実届ける。
それが長距離トラックの仕事です。
スピード出せばいいじゃん。
多くの人がそう思うでしょう。
しかしトラック業界には
「遅れるな。でも、スピードは出すな」
という縛りが存在し、早く走りたくても走れないと言うのです。。。
そんな理不尽な長距離トラック業界に苦言を呈したのは
ある女性トラック運転手さんです。
警鐘を鳴らしている女性ドライバーは
訳あって、10tトラックの免許を持っている。
そして20代前半から数年、
北は甲信越〜南は関西方面まで、
自動車製造で扱う金型を運んでいた。
平均で1日500キロ。繁忙期では、800キロを走行する。
いわゆる中・長距離ドライバーでした。
そして当時はモテ期の絶頂だったw
田舎で信号待ちをしていると、よく声を掛けられました。
「あんた、一人でこんなとこまで来たんかえ。こんなデカい車乗って!」
当時まだまだ女性ドライバーが少なく、
さらに平ボディ(荷台が箱になっていないトラック)ともなると、物珍しかった。
特に思い出深いのが、
サービスエリアでのひと時です。
明け方5時ごろ
同じ時間、同じサービスエリアに行くと、
いつもと同じ50~60代のおっちゃんら数名が、
日替わりで声を掛けてくれました。
「おう!芋食え、芋!」
「このカセット貸してやる!聞いてみな!」
「俺の息子の嫁になってくんねぇか?」
そのうち一人には、
前歯が全部ない上に饒舌だったので、
申し訳ないが、何を言っているのか
正直よく分かりませんでした。
それから10年・・・
トラックドライバーの過酷な労働状況は、
改善どころか、年々深刻さを増しているのです・・・
トラックによる貨物輸送は、
日本国内の物流の約9割を占めます。
鉄道、航空輸送手段でも、
小さな輸送会社は結局のトラックでの運送が主で、
まさに日本経済の最重要ポジションであり、
毎日色々な企業に「栄養」を行き届けています。
現在では無人運転なども開発されていますが、
まだまだトラックを運転しているのは人間。
先日、ヤマト運輸が宅配運賃の値上げを発表した。
この主な要因は、
ドライバーの過重労働である。
近年では、ネット販売会社の普及により、
ドライバーがサービス残業を強いられているのが現状です。
これを打開するには、やはり
値上げは避けられなかったのでしょう。
それでもヤマトなどの大手はまだいい方で、
運送業界には多くの下請けがおり、
第7段階まで存在するとも言われている。
下にいけばいくほど運賃は安くなり、
末端の業者は、高い燃料と高速料金を支払えば、
何も残らない。
彼らトラックドライバーには低学歴の男性が多く、
腕一本で家族を養うには都合がいいのです。
しかし、いいのは都合だけで、
仕事はきつい、汚い、危険と、過酷を極めるます。
彼らの仕事の中で一番重要なのは、「時間厳守」。
たとえ道が渋滞していようが、台風が来ようが、
取引先が指定した時刻は守らなければならないのです。
指定の時間に遅刻することは、
ドライバーにとって最も恥ずべきことで、
会社にも大きなダメージとなる。
時には契約解除、損害賠償を請求されることも少なくないのです・・・
出典: clover48.com
ここで前ページで少し話した、
”前歯が全部ない上に饒舌だったおじさん”
元々彼は、歯はあったらしいです。
では何故、歯がなくなったのか・・・
その背景には、ドライバーの過酷な現実があったからです・・・
現在大型自動車には
スピードリミッターの装着が義務付けられ、
最大時速が90キロまでしか出せなくなりました。
大型車が追い越し車線でノロノロと走っているのは、
わざと遅く走りたくて走っているのではなく、「走れない」のです・・・
遅れては行けない、でもスピードは出してはダメ!
この条件で唯一削れるのは、ドライバーの休憩時間です。
「4時間につき30分休憩を取らなければならない」という法律がありますが、
これを守れるドライバーはごく一部なのが現実です・・・。
多くのドライバーの現状は、
10時間以上休まず、ペットボトルに用を足しながら運転する
そんなドライバーが数多くいます。
ようやくできた休憩時間も、車内で仮眠。
食事も、眠くなるので腹いっぱいは食べれない。
家には2週間以上帰れないことも珍しくない。
そのため、毎食「コンビニのおにぎりと缶コーヒー」
などの軽食で空腹を和らげます。
こんな分刻みのスケジュールの中、
遅れずに届ける!というプロのドライバーに、
歯なんて磨いている余裕もあるはずなく、
例のおじさんに前歯がないことは、
決して笑い話なだけではなかったんです・・・
そんな過酷なドライバー達の
孤独との戦いを支えているのは・・・
長距離ドライバーは、会社の同僚はいますが、
トラックに乗り込めば、
「孤独」と「時間」と「睡魔」との戦いを強いられます。
そのせいなのかわかりませんが、
彼らには互いにコミュニケーションを取るのが好きな人が多いんです。
車内に必ずあるものは、
ハンズフリーのイヤホンマイク。
仲間同士、どこで渋滞が発生しているのか情報交換したり、
どちらも居眠りさせない環境を作るのです。
さらにはトラックドライバー同士で、
こういう心遣いがあるのはご存じでしょうか?
あなたが普通自動車のドライバーだと考えて下さい。
あなた赤信号を先頭で右に曲がろうと待っています。
すぐ後ろには長距離トラック。
対向車線もトラックが同じように赤信号を待っています。
こういう場合、信号が青になった瞬間に
対向車線のトラックはすぐに直進せず、
あなたを先に右折させることが多いんです。
何故だか分かりますか?
あなたのために右折させたわけでなく、
後ろのトラックのためにしていることなんです。
前の乗用車を先に通すことで、
幅の広い後ろのトラックが
詰まらず直進できるようにする為です。
これはトラックドライバーの暗黙ルールとされていて、
お互い全く面識がなくても、
こうして互いに助け合っているんです。
さらに、あなたの後方にいたトラックは、
あなたが右折した後、
対向車線のドライバーに手をあげて挨拶をします。
「ありがとな。」
すると、ゆずったトラックも
「お互い様だよ。」
と手をあげてそれに応えるんです。
この女性ドライバーは、こういう状況を
目撃するたびに、胸が熱くなと言います。
歯がなくても、学歴がなくても、
日本のトラックドライバーには、
仲間を思いやるハートがあるのです。
互いに苦労を知っているからこそ
助け合い、譲り合えるのでしょう。
日本経済は物流なしでは成り立たない。
その物流を支えるトラックドライバーが、
悲鳴を上げているのが現状です・・・
日本の生活をより豊かに、安定させる為には、
まずドライバー達の生活を豊かにする必要があるのではないでしょうか?
少しくらい遅れてもいい。
そんなゆとりをもてる社会になってほしいと願います。
コメント