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夫が怖くてたまらない…DVに陥りやすい人を見分ける4つのポイント

あなたの配偶者は、大丈夫ですか?
2016/08/01 UPDATE
 
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ドメスティック・バイオレンス防止法

2001年に「ドメスティック・バイオレンス防止法」が施行されてから
15年半という歳月が過ぎた。


「配偶者間の暴力は犯罪である」と明言した法律ができたことで、
行政や警察の対応は変わった。


「警察は民事不介入」などと言われ、泣き寝入りを強いられてきた被害者が、
堂々と助けを求められるようになったのだ。

ドメスティック・バイオレンスという言葉は、日本の社会にも浸透し、
2015年、全国の警察が把握したDV被害も6万3000件超と過去最多を記録した。

これもDV防止法後の変化のひとつといえるのではないか。

変わらない「世間の理解不足」

法律ができたことによって、幾分か被害は表面化されたが、変わらないこともある。


「私さえ我慢すればいい」と、理不尽な暴力にひたすら耐えてしまう被害者の心理と、
警察など援助する側の人々も含めた世間の理解不足である。

「夫が怖くてたまらない」の著者で、友人がDVの被害者であったことをきっかけに、
この問題の取材を続けている梶山寿子氏は次のように語る。

「DV」という言葉は知られるようになっても、ほとんどの人の知識はごく表面的なものにとどまっている。この犯罪の真の怖さは共有されていないのだ。

 「DVなんて、一部の家庭に起こる特殊な問題だ」「さっさと逃げないほうも悪いだろう」。そんなふうに考えている人も、まだまだ多いように感じる。

 よくある誤解は次のようなものだ。「あんなりっぱな人が、そんなひどいことをするはずがない」「ささいなことを大袈裟に言っているだけ。離婚しないのは、たいしたことじゃない証拠」「殴られる側にも問題があったはず」「ひとり親はかわいそう。子どものために我慢するべき」。

 こうした世間の偏見が被害者を苦しめ、被害を潜在化させているのだ。

被害者もDVを認めたがらない

DVの被害者は、一刻も早く地獄の状況から抜け出そうと必死に助けを求めている
イメージを持つかもしれないが、実はそうではない。


「DVという言葉は知っている。でも、わたしの場合はDVじゃない」。

そう思い込もうとしている人が少なくないのだという。


さらに複雑なのは、近年話題の言葉である”モラハラ”のケースである。

DVの心理的虐待は、近年、注目されている夫婦間のモラハラ(モラル・ハラスメント)と同じだが、モラハラの被害者を自認する人は、自身がDVを受けているとは思っていない。「うちの場合はDVではなく、モラハラです」と、かたくなに言い張るのだ。

 ひどい仕打ちを受けても自身が被害者だと認めたくない背景には、自分が選んだ相手を否定されたくない(ひいては自分自身を否定されたくない)という心理も働いていると、専門家は指摘する。
理由もなく殴られ、ののしられても、「わたしにも悪いところがあった」。階段から突き落とされても、「たいしたことではない」。そう言い聞かせて、恐怖や痛みに耐えてしまうのだ。
DⅤというと、殴る、蹴るといった身体的な暴力ばかりがクローズアップされるが、それは虐待のほんの一部である。自尊心を打ち砕くような暴言、陰湿な脅迫や恫喝、巧みなマインドコントロール、子どもへの虐待、ストーカー行為……。あらゆる手を使って相手を追い詰め、自分の意のままに支配し、操る。それこそが加害者の目的であって、さまざまな暴力や嫌がらせは“洗脳のための手段”にすぎないのだ(だから殴るのに理由などいらない)。

梶山氏は

加害者の目的は殴ることではなく、相手を支配することにあること、被害者にとってほんとうに深刻なのは、身体の傷ではなく心の傷だということ、被害者が別れを決意してもDVは簡単に終わらない

このことを多くの人に知ってほしいと言う。

加害者の言動に共通する4つのポイント

ここで「加害者の言動の共通点」を4点ほど紹介する。

自分のパートナー(男女を問わない)にこうした兆候があれば、注意してほしい。

1•結婚を急ぐ
出会った当初は相手に対して非常にやさしい。そして、異常なほど結婚を急ぐ。非常に嫉妬深いことも特徴である。「それほど自分のことを好きなんだ」と相手が好意的に解釈し、周囲の反対を押し切って結婚に踏み切ると、直後に態度を豹変させる。
2•暴力を否定
相手に重傷を負わすほどの暴力をふるっても罪の意識はない。「たいしたことはしていない」「あれは暴力とはいえない」と手前勝手に解釈したり、嘘をついたりして、虐待の事実を否定する。
3•責任の転嫁
「あいつがそう仕向けた」「酒のせいだ」などと自分以外のものに罪をなすりつけ、自分はむしろ被害者だと考える。また、「相手のことを考えて、まちがった行動を正すためにやった」「こんなダメなヤツと結婚して、自分は不幸だ」などと主張し、他人も自分の意見に同調してくれるものと信じている。
4•外面の良さとのギャップ
家での言動とは裏腹に、その人物に対する世間の評判は悪くない。医者、弁護士、大学教授などのエリートも多く、穏やかで人あたりのいい、家族思いの常識人という印象を持たれている。そのため被害者が周囲の人に暴力を打ち明けても、「あんないい人が、まさか……」と信じてもらえないのだ。

被害者はなぜ逃げられないのか

一方、被害者は「なぜ逃げないのか?」と言われることも多い。

逃げないのではなく、「逃げられない」のである。

虐待を受け続けるうちに、被害者は感情を失い、生きる力を奪い取られてしまう。「おまえはバカだ! クズだ!」と何度もののしられるうちに、自尊心をズタズタに切り裂かれ、「わたしは最低の人間だ。だから殴られるのだ」と思い込んでしまう。無力感に支配されて、相手を責めることや、「逃げる」「別れる」という前向きな行動をとれなくなってしまうのだ。

 暴力にサイクルがあることも、被害者をさらに追い詰める。まず、言葉の暴力や脅迫などで緊張が高まる時期があり、次に実際に暴力をふるったり、「殺すぞ!」と凶器を突きつける暴力の爆発期がある。こうした行動は、被害者が別居や離婚を口にするとますます激しくなるが、しばらくすると「ほんとうに悪かった。もう殴ったりしないから……」と、甘い言葉やプレゼントを並べて更生を誓う時期がくるのだ。

 一度は愛した相手である。「おまえがいなきゃ、ダメなんだ」と泣きつかれれば、気持ちも揺らぐ。直前の暴力が激しかっただけに、ちょっとやさしくされただけで幸せな気持ちになり、相手の言葉をつい信じたくなってしまう。「きっと改心してくれる。二人で努力して、もう一度やり直そう」。そう考えて元のさやに収まるが、結局、約束は守られず、緊張と暴力の爆発のサイクルが繰り返される。そして、暴力は次第にエスカレート。洗脳が強化されるのだ。
また、意を決して家を出ても、実際に離婚することはたやすいことではない。加害者は別れ話にそう簡単に応じないからだ。「別れると言うのなら、おまえの両親や兄弟も無事ではいられないぞ!」。そうすごんで刃物をちらつかせたり、「どうしても離婚すると言うなら自殺する」などと脅かす。調停や裁判でも、「暴力などふるっていない」と平然と嘘をつくのである。

 実家に逃げた程度では、すぐに追いかけてくる。嫌がらせの電話やメール、職場や子どもの学校での待ち伏せ……。度重なる脅迫やストーカー行為におびえて、せっかく家を出ても、再び家に戻ってしまう被害者はとても多いのだ。

「相手と別れた」のはわずか10.8%

暴力をふるう配偶者と、最終的にはどのような道を選択するのか。

驚くべき調査の実態が明かされた。

まるで巧妙なわなにはまったように、被害者は加害者のもとから逃げ出せない。

 2014年の内閣府の調査でも、何らかの被害を受けた女性のうち、「相手と別れた」のはわずか10.8%。「別れたいと思ったが、別れなかった」が45.8%、「別れたいとは思わなかった」が36.4%となっている。

 なんとか離婚が成立しても、被害者にとって自立の道は険しい。安倍政権は「一億総活躍社会」「女性の活躍推進」などを掲げるが、女性や子どもの貧困が社会問題となっているように、シングルマザーが子どもと暮らせるだけの収入を得ることはたやすいことではないからだ。
もちろん、高収入のキャリアウーマンであっても安泰というわけではない。離婚後も加害者は執拗に追いかけてくる。安全を確保するには周囲の助けも必要となるが、職場で理解を得ることは難しい。「DV被害を受けている社員には転勤の便宜を図る」といった対策が広がるよう、アメリカに倣って、管理職向けのDV研修が企業でも行われることを期待したい。

 DVは誰にとっても他人事ではない。拙著やこの記事が、被害者やその周囲の人々に「気づき」を促すものとなれば幸いである。まずは被害者が、自身の置かれている危険な状況を自覚することが重要なのだ。それが、自分自身を取り戻すための第一歩となる。

 最後に、子どもへの影響についてもふれておきたい。暴力のある家庭で育ち、親のDVを目撃した子どもたちは、たとえ自身が直接虐待されていなくても心に深いダメージを負う。それが子どもたちを苦しめ、ひいては社会に悪影響を及ぼすという事実に、我々はもっと真剣に向き合うべきだろう。

命を脅かすほどの暴力や暴言。


ひとりでも多くの被害者が救済されるためにも、国民ひとりひとりが
もっとDVの実態を知る必要があるだろう。

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