これは2年ほど前の蒸し暑い夏の時期の話で
私が中途で入職したての病院で夜勤をしていた時の事です。
その日、私は救急室で搬送されてくる患者さんの対応をしていました。
救急車が交代で入ってきて、患者さんの処置をしており
その中の1人が私が働いている病院をかかりつけとしている患者さんでした。
それを確認した当直の医師から「カルテを取ってきてほしい」と言われたので
内科外来へとその患者さんのカルテを取りに向かいました。
内科外来は救急室から結構はなれた場所にあり、5~10分ほど歩かなければいけません。
夜間なので、もちろん廊下や病室の電気は消灯されていて、懐中電灯を持ってカルテを取りに行きました。
病院の勤務は慣れていましたが、この雰囲気だけは今でも慣れることがありません。
いやな雰囲気を我慢して、内科外来にたどり着いて部屋の電気をつけました。
さっきの暗い廊下と対照的な電気にさえ、恐怖感を覚えます。
やはり病院という場所は、何人もの人間が亡くなっている場所でもあり
意識しないようにしても「霊」という存在に対して過剰に意識してしまいます。
必至に頭の中で
次の休みに何をしょうか?休憩の時間にご飯を食べよう。
と意識を別の方に持っていきながら、カルテを探し出して救急室に戻ろうとした時でした。
入ってきたドアの前にカルテが落ちていたのです。
あれ?入ってきたときには無かったと思うけど…。
不思議に思いながら拾い上げて中を見てみました。そこには「山中」という名前が記入されています。
特に必要なカルテでもなかったので、所定の位置に戻した瞬間
プルルルルルルルル!
電話が鳴りました。
深夜に内科外来に電話?誰だろう?と疑問を持ちながら電話を取り対応しようとした時
「見てよ」
と囁く声が電話から聞こえました。
私は反射的に電話を切り、叫びたいのをこらえながらその部屋を後にしました。
急ぎ足で救急室に戻り、カルテを渡したあと
看護師の先輩に内科外来での出来事を話しました。
そうすると先輩は、一瞬こわばった顔をしたかと思うと昔の話をしてくれたんです。
この病院に、最近まで山中という名前の研修医がいたこと
そして
その山中という研修医が夜勤中にトイレの中で首を吊って、満面の笑みで死んでいたこと。
あの時、電話の向こうから聞こえてきた声は山中という人の声だったのでしょうか
だとすると、彼は何を見てほしかったのか
そして・・・カルテの中には何が書いてあったのでしょうか…。
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