Aちゃんは凄くいい子で仕事も出来る。
彼氏はとても優しく真面目そうな資産家令息。
小さい会社だから、もう会社中で
我が事のように大喜びだった。
式には社員総出( 社員の家族)でお呼ばれ。
式中、結婚にいたったきっかけが披露された。
彼氏に腫瘍ができたことが発覚。
そのときAちゃんが彼氏に
「もし悪性だったら結婚しよう、
あなたに出来ることは全部したいから」と
プロポーズしたらしい。
幸い腫瘍は良性で、
検査結果を聞きに行った帰りに彼氏から
「 良性だったけど、結婚してくれますか」と改めて
プロポーズしたんだって。
その話に一同和んでいたところ、
新郎友人席からバカにしたような
「ハッ」という女の笑い声。
「バカじゃないの、
もろ遺産狙いバレバレじゃん」
見るとなんか荒んだ
ケバ目の女が酔っ払って
グデグデしながら喚いていたわけ。
その後も
「新婦の席見てみなよ、片親じゃん」
「この前みかけたらユニクロとか着てて地味だった。
嫁ぎ先に不似合い」
挙句「ブス」などAちゃんをけなし放題。
その女の旦那さんらしい人が
手を上げそうになってるわ、
うちの会社の後輩(若くて血の気が多い)が
「あんたにAさんの何が分かんのよ!」
とか怒鳴りだすわ、
もうぐちゃぐちゃの大騒ぎ。
と、ゴボゴボッ、
ドンドンというような音の後に
「あーあー」という女性の声。
声のほうを振り返ってみると、
和装の美熟女がマイク片手にすっと立っていた。
新郎のお母様だった。
「新郎の母でございます」
と言って頭を下げるお母さん。
場に緊張が走る。
しかし、ここから予想を超えた
スーパーお母さんタイムが始まった。
お母さん、弁舌も爽やかに、
ひとつひとつ反論を始めたのだ。
・母子家庭
両親が揃った家庭に育っても
殺人鬼になる者もおり、
片親の家庭で立派に育つ子もいる。
家庭環境は一要因に過ぎず、
それだけで
子供の全人格を判断するなどありえない。
Aちゃん家はお母さんも立派な
キャリアウーマンで教養もあり、
お兄さんも立派な青年。
協力し合って家庭を作ってきたA家は
そんじょそこらの家より余程いい家庭であり、
娘(Aちゃん)も素晴らしいお嬢さんに育っている。
・Aちゃんが地味
確かにAちゃんに華美なところはなく、
地味で堅実な女性である。
しかし我が家(新郎家)も
堅実な生活を旨としており、
浮ついた華美な暮らしはむしろ嫌っている。
新郎も小学校から大学まですべて国公立で、
大学時代は学費以外仕送りもしなかった。
就職もコネを一切使わなかったし、
現在も真面目に会社勤めをしている。
そんな我が家にAちゃんはぴったりであると考える。
・ブス
事実に反するので反論の必要はないと見なす。
・遺産狙い?
そもそもAちゃんの家も裕福であり、
Aちゃんの人柄と併せて考えると
そんなことはありえない。
Aちゃんはとてもいい子で、
自分たちのみならず
親類にまで良くしてくれている。
病人がでれば有給を潰して手術に立ち会ってくれ、
新郎の幼い甥や姪がお留守番になると聞けば
二人きりのデートの筈の日にちびっ子を誘って
動物園に連れて行ってくれる。
我が家の財産を全部投じたとしても、
今時こんないいお嬢さんがうちのボンヤリした
息子に嫁いでくれるなら
むしろ収支はプラスであると我々は考える。
まさにリアル「はい論破」状態。
お母さんの話がまた上手いんだ、
声も良く通るし。
話しの最中から、
新郎の親類席から国会みたいな
「そうだ!」「よく言った!」
などの声が飛び、
合間合間には拍手も起こってなんだか会場は
一気に盛り上がり始めた。
お母さん、
話し終わると横で
静かにしていた優しい顔の紳士に
「ん。」とマイクを差し出した。
紳士がひとこと
「新郎の父でございます。
ま、家内の申すとおりですな」と言うと会場拍手喝さい。
想像を遥かに超える形でトラブルは丸く収まった。
ケバ目女は椅子蹴り倒して出てった。
ロビーで「ご祝儀返せよテメエ!」っていう怒号を残して。
後から聞いたら
喚いてたケバ目女は新郎の大学時代の
友人の奥さんで、
旦那が単身赴任してる間に
いろいろこじらせてたようで、
旦那さえそんなことする女とは
思ってなかったとのこと。
式終了後は、新郎新婦、その親たち、新郎の友人たち、
その他いろんな人が頭を下げあってて異様な光景だった(笑)
両家の母親たちが泣きながらしっかりと手を握り合ってて、
両家の目に見えない何かが深まったこと感じた。
大事な後輩の式になんてこと!
と最初は思ったけど
一部始終を見て、
ああこんないいお家に、大事にされてお嫁に行くんだなーと
感動を胸に刻んで、
想いあえる、支えあえる人がいるって
とっても素晴らしいことだなと
枕を抱き眠りにつきました。
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