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【実話】戦時中,上野動物園にいた三匹の象のお話に涙が止まらない...

【実話】戦時中,上野動物園にいた三匹の象のお話
2018/03/24 UPDATE
 
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上野動物園の


象の檻の前の広場では、2頭の象が芸当の真っ最中


大勢の見物人を喜ばせています。


その賑やかな広場から、少し離れた所に


あまり気の付く人はいませんが、動物園で死んだ


動物たちをお祀りしているお墓があります

ある日


動物園の人が、その石のお墓に関する

哀しい象の物語を聞かせてくれました。

(ここで改ページします)

その頃、日本は、アメリカと戦争をしていました。



戦争がだんだん激しくなって、



東京の街には毎日毎晩、爆弾が雨のように振り落とされてきました。



その頃、上野動物園には



名前を、『ジョン』、『トンキー』、『ワンリー』という像がいました。



その爆弾が、もしも、動物園に落ちたら、どうなることでしょう。



檻が壊されて、恐ろしい動物たちが街へ暴れ出したら、


大変なことになります。


それを防ぐためにライオンも、トラも、ヒョウも、クマも大蛇も、


毒を飲ませて殺したそうです。



三頭の象も、いよいよ・・・


ということになりました。


まず第一に、いつも暴れん坊で、言う事を聞かない


『ジョン』から始めることに



『ジョン』は、ジャガイモが大好きでした。



ですから、毒薬を入れたジャガイモを普通の


ジャガイモに混ぜて食べさせようとしました。



けれども利口な『ジョン』は、毒のジャガイモを


口まで持っていくのですが、すぐに長い鼻で


ポンポンと遠くへ投げ返してしまうのです。



仕方なく、馬に使う、とても大きな注射の道具と


太い注射の針が支度され


毒薬を身体へ注射することになりました。



ところが、象の身体は大変皮が厚くて、太い針は


どれもポキポキと折れてしまうのでした。


仕方なく食べ物を一つもやらずにいたら


十七日目に死んでしまったそうです


続いて、『トンキー』と、『ワンリー』の番です。



この二頭の象は、いつも可愛い目をじっと見張った心の優しい象でした。



そのため、動物園の人たちは、


この二頭を何とかして助けたいと考えて、


仙台の動物園へ送ろうとしました



しかし、仙台の町に、爆弾が落とされ、


仙台の街で象が暴れ出たら、東京の人たちが責任を取ることが


できません


そこで、やはり上野の動物園で・・・


ということになりました。


毎日、餌をやらない日が続きました。


『トンキー』も、『ワンリー』も、だんだん痩せ細って


元気が無くなっていきました。


時々、見回りに行く人を見ると、よたよたと立ち上がって、


「餌をください。」


「食べ物をください。」


と細い声を出して、せがむのでした。


そのうち、可愛いかった目が


ゴムまりのようにぐっと飛び出してきました。


耳ばかりが物凄く大きく見える哀しい姿に変わりました。



今まで、自分の子供のように可愛がってきた象係の人は、


「可哀想に。可哀想に。」


と檻の前を行ったり来たりして、うろうろするばかりでした。

すると、

(ここで改ページします)

『トンキー』と、『ワンリー』は、


ひょろひょろと身体を起して、象係の前で


必死に芸当を始めたのです。


後ろ足で立ち上がりました。


前足を折り曲げました。


鼻を高く上げて、万歳をしました。


萎び切った身体中の力を振り絞って、芸当を見せるのでした。


芸当をすれば、昔のように、餌がもらえると思ったのです。


『トンキー』も、『ワンリー』も、よろけながら一生懸命です。


象係の人は、もう我慢できません。


餌のある小屋へ飛び込みました。


水と餌を抱えて、象の脚に抱きすがりました。


動物園の人たちは、みんなこれを見てみないふりをしていました。



象に餌をやってはいけないのです。


水を飲ませてはならないのです。


どうしても、この二頭の象を生かしてはいけないのです。


けれども、こうして一日でも長く生かしておけば、


戦争も終わって助かるのではないかと、どの人も


心の中で神様にお願いをしていました。


けれども『トンキー』も『ワンリー』も、


ついに動けなくなってしまいました。


じっと身体を横にしたまま、


空を見つめているのがやっとでした。


こうなると象係の人も、もう胸が張り裂けるほど


つらくなって象を見に行く元気がありません。

(ここで改ページします)

ついに、『ワンリー』は十幾日目に、


『トンキー』は二十幾日目に、どちらも鉄の檻にもたれながら、


やせこけた鼻を高く伸ばして、万歳の芸当をしたまま死んでしまいました。


象が死んだことを知った動物園の人たちは、


象の檻に駆け集まって、みんなどっと檻の中にいる


象の身体にとりすがりました。


象の身体を揺さぶりました。


動物園の人たちは声をあげて泣き出しました。


その頭の上を、またも爆弾を積んだ敵の飛行機が、



ごうごうと東京の空に攻め寄せてきました。


どの人も象に抱きついたまま、こぶしを振り上げて


「戦争をやめろ。」



と叫びました。


後でわかったことですが象の胃袋には、



一滴の水さえも入っていなかったそうです


その三頭の象も、今はこのお墓の下に静かに眠っているのです。


動物園の人は、目を潤ませてこの話をしていました。



哀しい戦時中の動物園のお話。

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