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LINEの魅力のひとつに、「スタンプ」があります。文字だけでは堅苦しくなってしまう文章も、スタンプを交えるだけで表現が豊かになり、自然と会話が盛り上がります。
スタンプには無料と有料があり、LINEや企業が配布している無料スタンプでも十分なのですが、子どもたちに人気なのは有料スタンプです。アニメや漫画の人気キャラクター、芸能人とのコラボ、人気クリエーターが作ったスタンプなど、魅力的なスタンプが目白押しです。また、LINEの画面デザインを丸ごと変えられる「着せかえ」も同様で、やはり有料のものに人気が集まります。
現在、ほとんどの有料スタンプは50コイン(120円)か100コイン(240円)、有料着せかえは150コイン(360円)で販売されています。お小遣い制の小中学生からすると、とても気軽に買える価格ではありません。そこで子どもたちはLINEポイントをせっせと貯めます。LINEポイントとは、企業のアカウントを友達追加したり、CM動画を視聴することで貯められるポイントで、120ポイントを50コインに交換できます。しかし、いくら時間があるとはいえ、CM動画をひとつ見て1ポイントですから、とても気の長い作業です。
欲しくてたまらない有料スタンプ、それを無料でくれるという人が現れたら、子どもたちはどうするでしょうか。実は、「有料スタンププレゼント」をうたう、「スタンプ屋」アカウントが存在するのです。スタンプ屋のアカウントは、LINEのトークやタイムラインで拡散されてきます。友人から「本当にもらえたよ」と言われたら、「それなら」とつながってしまうのも無理はありません。
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しかし、スタンプ屋は本当に有料スタンプをくれるのでしょうか。本当にくれるのなら、なぜ見ず知らずの人にプレゼントしているのでしょうか。実際にスタンプ屋に当たってみることにしました。今回連絡したのは、子どもたちがシェアしていたアカウントとTwitterで宣伝しているアカウント、合わせて12アカウントです。
Yuiのプロフィール画像は優しい女性のイラストです。友達に追加すると、自分のタイムラインを見るように促します。タイムラインには記号や絵文字が入る優しい文体で、「わたしを疑う人や失礼な人、待てない人にはスタンプをあげません♪」など、厳しいルールがびっしりと書かれています。
そしてようやく、欲しいスタンプを聞かれました。「承認期間があるので1~3日間待ってね☆」という言葉とともに、アプリを消すな、タイムラインの共有範囲を変えるな、などの細かな指示が、相変わらず優しい文体で送られてきます。
Yuiのタイムラインを見ると、「スタンプありがとう!!」といった書き込みが5日間で180件近くありました。投稿している中には、あきらかに小学生や中学生のアカウントもあります。
そして、5日経った現在、いまだにスタンプはプレゼントされません。
スタンプ屋を「友達追加」すると、指示が送られてくる。スタンプをもらうためには指示を守るしかない
そして、スタンプをもらうための手順が送られてきます。ここで、真っ先に指示されるのが「タイムラインへの投稿」です。Yuiから「スタンプ本当にもらえたよ!これはやらないと損!LINEアカウントはこちら」というリンク入り文章と、スタンプがプレゼントされているトーク画面の画像が送られてきます。これをコピーし、自分のタイムラインに投稿させられます。つまり、タイムラインに投稿した時点でスタンプはもらえていないのです。スタンプをもらったと言っていた友人も、実はもらえていない可能性があるのです。
次に、Yuiはリンクからアプリを4つダウンロードするよう指示をしてきました。
「ダウンロードしたら、すべてのアプリを起動させて、遊んだ画面を1枚ずつスクリーンショットして私に送ってね^^」
指示されたとおり、無料のゲームアプリを4つダウンロードしました。データ量が多く、インストールに時間のかかるものばかりです。ゲームを起動してハンドル名などを登録し、ゲームが始まった画面を送りました。ひとつはアダルトな内容を含むゲームでした。
「LINE@」とは、情報発信やビジネスに使えるアカウントです。店舗や企業の利用がメインですが、個人でも無料で取得することができます。自分のLINEアカウントを使わず、プレゼント専用のアカウントを取得している「スタンプ係」は、トークの口調がビジネスマンのように理路整然とし、とても丁寧でした。
スタンプ係は、スタンプか着せかえをくれるといいます。URLのサイトにあるバナーから会員登録をするように指示してきました。バナーをタップすると、あるゲームサイトへの会員登録ページへと誘導されました。登録を済ませ、指示どおり登録画面のスクリーンショットを送ります。
「確認作業に入りますので、お待ちください」というトークを最後に5日経ちましたが、いまだにスタンプはプレゼントされません。
「無料プレゼント」のプロフィール画像は、LINEキャラクターがあしらわれています。特に拡散の指示もなく、「欲しいスタンプを教えてください♪」と問われたため、LINEクリエーターズスタンプを指定しました。すると、無料のメールマガジンを2つ登録するように指示され、リンクが送られてきました。指示どおりメールマガジンの購読を登録し、それぞれの登録完了メールのスクリーンショットを送ります。
なんと、本当に有料スタンプをもらえました。しかも、このキャンペーンは毎月行っているので、またよろしくとあいさつがありました。
さて、各ケースの仕組みを調べてみました。ケース1の「Yui」の目的は、アプリのアフィリエイトです。アフィリエイトとは、自分以外の人に商品を紹介すると、アフィリエイトサービスプロバイダー(ASP)から報酬を得られる仕組みです。ピンとこない人は、ブログなどでページの横に張られているバナー広告や、記事に張られている商品リンクを思い出してみてください。あのバナーやリンクもアフィリエイトのひとつで、誰かがクリックしてサイトを閲覧したり、実際に商品を購入したりすると、ASPからサイトの運営者に報酬が支払われるのです。
Yuiはゲームアプリをインストールさせるアフィリエイトに参加していました。こうしたアフィリエイトは、実際に起動した時点で報酬が支払われるため、起動後の画面を要求したのです。
今回の報酬金額が特定できなかったのですが、大手ASPの場合だとゲームアプリひとつにつき200~300円の報酬が手に入ります。今回Yuiは4つのアプリをインストールさせたので、800~1200円の儲けです。有料スタンプをプレゼントしたとしても、120円のスタンプなら、680~1080円の儲けです。
恐ろしいのは、Yuiのタイムラインです。小中学生と思われる180以上のアカウントが、Yuiの投稿に「スタンプありがとう」というコメントをしています。1人1000円の儲けだとして、18万円。かなりの稼ぎです。しかも、子どもたちを手なずけている印象で、次のアフィリエイトへとさりげなく誘導していました。
ケース2の「スタンプ係」は、会員登録のアフィリエイトです。アフィリエイト元を見ると、1件紹介につき1000円の報酬でした。かなり報酬単価の高いアフィリエイトです。
今回登録させられたのは、アダルトを含むオンラインゲームのサイトでした。サイトには18歳未満の登録は遠慮してほしいとの記載がありましたが、生年月日を偽装するのは簡単です。報酬のためには、未成年が迷い込むことなど気にしていないのでしょう。
ケース3の「無料プレゼント」は、メルマガ登録のアフィリエイトです。実際のアフィリエイト元を見てみましたが、今回の2件の登録で800円の収入になったようです。
ただ、この件はアフィリエイトというよりも、ネットワークビジネスに近い内容でした。登録したメールマガジンには、儲ける方法を教えるセミナーの案内や、起業を促す動画の紹介が記述されています。「ビジネス成功の秘訣を教える。もう900人が参加している」などと煽動される内容が毎日送信されてきます。スタンププレゼント目当てに登録するのは子どもが多く、今すぐネットワークビジネスの渦に巻き込まれることはありませんが、メールアドレスは先方に渡っているのです。この先、高校、大学と進んだとき、トラブルに巻き込まれないか心配になりました。
ここまで、連絡が取れた3つのアカウントを検証しましたが、すべてアフィリエイト目的で行っており、どれも子どもたちをかかわらせたくない内容でした。
「スタンプ屋」アカウントはLINEで友達から知らされる。Twitterでも拡散されている
今回連絡を取ったのは、全部で12アカウント。そのうち返事すらなかったアカウントが6、「今はしていない」というアカウントが3、指示に従ったのにくれないアカウントが2、スタンプをくれたアカウントが1つです。プレゼント目当てにこの12アカウントを「友達追加」し、相手にLINEアカウントを知られましたが、手に入れられた有料スタンプはたった1つです。
小中学生を持つ保護者の方は、ぜひこの結果をお子さんに話してあげてください。そして、「知らないLINEアカウントとは友達にならない」ことを何度も言い聞かせましょう。「スタンプをもらったらブロックすればいい」と言い返してくるかもしれませんが、その作業はリスクをはらんだものばかりです。有料スタンプが欲しい場合は家のお手伝いをするかお小遣いで買うなど、親子で話し合いを持つといいですね。
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