出典: trvimg.r10s.jp
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「変なホテル」は、長崎県佐世保市にあるハウステンボスの敷地内に建設された、72部屋(第1期)を有する宿泊施設。人件費、建設費、光熱費の三つを抑制する工夫を凝らした「世界初のローコストホテル」(ハウステンボスの澤田秀雄社長)である。
2階建てのその外観は、特段変わったところはない。だが、中に入ると他のホテルにはない、様々な工夫を目にすることになる。 ホテルに入って目を奪われるのが、左手にあるフロントだ。そこには3台のロボットが宿泊者を出迎える。カウンターをはさんで対話する相手は、女性型ロボットや恐竜型ロボットだ
「女性型はまだしも、なぜ恐竜のロボットがフロントに?」。外見がリアルな恐竜が帽子と蝶ネクタイをしてフロントに立っている様子に、ここが「変なホテル」であることに改めて気付かされる。
まずはチェックイン。女性型ロボット
の前に立つと、センサーでそのことを感知し、女性型ロボットが話し始める。「いらっしゃいませ。変なホテルにようこそ。チェックインをご希望のお客様は1のボタンを押してください」。
お辞儀をしたり、口やまぶたを動かしたりしながら話す女性型ロボット。その動きは、思っていたよりもスムーズで、ほとんど違和感はなかった。
■女性型ロボットとはボタンで会話
フロントのカウンターの上には、1~3と番号が振られたボタン付きの装置がある。ロボットの案内に従ってボタンを押す(写真3)。すると、ロボットは「宿泊者名簿に氏名などを記載してください」「右手にある端末でお客様の名前を入力してください」などと案内してくれる。
カウンターに備え付けてある専用紙に自分の氏名などを記入し、それを投函する。その後、右側に移動して、カメラやタッチパネルの付いた端末の前に立つ。
タッチパネルには「チェックイン」と書かれたボタンが画面に表示されているので、それを押す。その後は、画面の指示通りに氏名を入力(写真4)。すると、非接触型のICカードキーが発行された
宿泊者がカードキーを忘れたり、紛失したりすることもある。そんな場合に備えて変なホテルは、カードキーがなくても入室できるよう、顔認証システムを導入している。顔画像の登録は、ICカードキーを発行するのと同じ端末で行う。
直前に発行されたカードキーを読み取り部分にかざしながら、カメラの前に立って、顔画像を登録。これで自分の顔をルームキーとして使える手続きは完了だ。
顔画像を登録したくないという宿泊客もいるだろう。その場合は、顔画像を登録しなくても構わない。その際は、ICカードキーだけを使うことになる。
これまでの端末の操作については、画面の指示をきちんと読めば、特に難しいことはなかった。
これでチェックインは完了だ。再び女性型ロボットの前に立ってみると、「操作が完了したら3のボタンを押してください」と話す。ボタン3を押すと、「以上でチェックインは終了です。ありがとうございました。滞在をお楽しみください」と言ってロボットがお辞儀をした。これで部屋に入れる。
■人型ロボットは本当に必要なのか
チェックイン作業をすべて終えてみて一つの疑問が浮かんだ。「この女性型ロボットと会話しなくても、カメラやタッチパネルの付いた端末を操作するだけでチェックインできてしまうのではないだろうか」。
この点をホテルの従業員に尋ねてみた。答えは「宿泊者名簿への記入は必要なので、女性型ロボットとのやり取りは必要です。ただしそれだけでチェックイン業務を完結させているのではなく、横にある専用端末も使ってもらわないとなりません」。フロントロボットはチェックイン業務の案内役という位置づけである。
極論すると、コスト削減だけを突き詰めるならば、「わざわざフロントに人型のロボットを設置する必要がないのでは」と思う。しかし、このロボットたちがフロントにいなかったらどんな光景になるかを想像してみると、端末だけが並んだ無味乾燥な無人フロントの姿が浮かび上がってくる。
これでは、いかにローコストを追求したといえども、顧客を引きつけられるとは思えない。
なるほど。ローコストを追求しすぎて無味乾燥なホテルになってしまっては、顧客にとって“つまらない”。ハウステンボスで遊んでウキウキした気持ちになっていたのに、ホテルに着いた途端にその興がさめることになってはならない。だからこそ、このフロントにエンタテインメントとして女性型ロボットや恐竜型ロボットを配置する意味があるのだと分かった。
澤田社長は変なホテルについて、生産性だけでなく、快適性も同時に追求すると説明している。このフロントを最初に見たときの「何だこれは?」という驚きやワクワク感。それらが快適性につながるというわけだ。
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