電車内で堂々と指輪を盗もうとする子供

仕事の帰り、電車で座ってうとうとしてた時のこと。

誰かが私の手に触っている感じがした。痴漢?と思って薄目を開けたら小さな女の子が私の爪を触っていた。

爪にネイルアートがしてあったので、女の子だから興味があるんだな、と思って可愛らしいから、気づかないふりをしてあげた。

女の子は爪に触った後で次はブレスレット、最後に指輪に触り始めた。

その内に指輪をそーっと私の指から抜いて外そうとして、これにはさすがにビックリして、急に目が覚めたふりをして手を動かした。

女の子はまったく動じず無表情。何事もなかったように立っていて、横には携帯をいじってるお母さんらしき女性。

ドキドキしながらも平静をよそおって再び目を閉じ、今あったことを反芻していたら、その母親らしき人が小さい声でぼそっと「もう一回」って。

怖くて席を立ちました。

電車の網棚の上にスーツ姿のおっさんが横になっていた

夜の9時頃、電車に乗っていた時、寝こけていたらしく、ハッとして目が覚めた。

向かい側の網棚の上に、スーツ姿のおっさんが横になっていた。おいおい、酔っぱらいかよ…とあきれて周りをうかがったけど、誰も気にしていない。

よく見るとおっさんは白目をむいていた。酔っ払いにしてもヤバくね?と思ったら、近くにいた女が大音量でキャーッ!!!と叫んだ。

周りがざわついて女を見たけど、すぐに迷惑そうに皆目をそらして興味を失っていった。

自分も目をそらしたら、おっさんが視界に入った。おっさんの目が真っ赤になっていた。瞳じゃなくて、眼球全体が血みたいに真っ赤。

女がもう一度キャーッ!!!と叫んだ。今度こそ皆、女を完全に無視した。おっさんの存在と女の叫び声で、変に心臓がドキドキしていた。

次の駅に停まって、乗り込んで来た人が網棚に荷物を乱暴に置いた。あっと思った時には、もうおっさんはいなかったし、女は叫ばなくなった。

時々思い出して、夜の電車が嫌になる。

嘘つきの幽霊

そういえば5年くらい前に昼過ぎの空いた電車に乗っていたら、それまでカバンを抱えて座っていた40代後半くらいのおっさんが、停車駅でもないのに急に立ち上がった。

おっさんは額から頭頂部まで禿げ上がっていて身長はかなり高く、痩せ気味ではあるものの、骨格が太くいい体格だった。

おっさんは目を半眼のようにして、直立不動で何やら軍歌のようなものを大声で歌い始めた。歌い終わってから

「みなさん聞かれたことがあるかもしれませんが、今のはPL学園校歌です。私は在学時野球部で5番を打っていました。

惜しくも甲子園には行けませんでしたが…私は昨日付けで会社をクビになりました。なりましたが…しかしめげませんよ。野球部時代を思い出してこれからも頑張ります」

と言って座った。最後の方の声はややかすれがちだった。

まばらだった他の乗客はあっけにとられていたが、小さい声で「そうか、ガンバレよ」と言った人が一人いた。
それでこのおっさんの態度が印象に残ってたんで、会社の飲み会の2次会で居酒屋に行ったときに皆に話したんだよ。

そうしたらみなちょっとシュンとなって、この景気じゃ人ごとじゃないよな、みたいな雰囲気になった。

そしたら居酒屋のついたての向こうにいたタイガース帽のおやじが話を聞きつけて顔をのぞかせ

「それ、阪急宝塚線だろ」

と聞いてきた。

「そうだ」

と言うと、おやじは

「それ幽霊だぞ。しかも嘘つきの幽霊だ。会社を首になったのは何年も前だし、そのすぐ後に首を吊って死んでる。年に数回出るから、あの沿線じゃちょっと有名だよ」

と言うんで

「幽霊とは思えなかったな。生きた人にしか見えなかったよ。それで嘘つきってどういうことだい」

と聞くとおやじは

「最初に出たときはPLの8番バッターと言ってたんだよ。それがだんだん打順が上がってきた。人間死んでからまでも見栄をはりたいんかねえ。次は4番バッターになってるだろうよ」

と言った。

テレアポ[息が止まるまで何度も、何度も、刺す…はい…しぬまで…逃がさない]←えっ?

ちょっと前にテレアポのバイトをしていた時なんだけど。

小さな事務所で、インカム着けて通話しつつもお互いの内容がなんとなく聞こえるくらい。

そこでバイト仲間の一人が妙なことになったんだよね。

俺は壁際で、隣はA(学生、男)って真面目な奴しかいないんで、その会話を聞き流しつつ、めんどくせーとか思いながら俺もリストにしたがって順番にノルマやっつけようとしてた。

インカムでふさがれてない左耳に

「はい…7月の…18日ですね…渋谷。はい、確実に」

ってAの声が聞こえてきて、アポ順調だなー、いいなー、なんて思ってたんだけど、そのあと

「息が止まるまで何度も、何度も、刺す…はい…死ぬまで…逃がさない」って。

「えっ?」と思ったら、急にAが後ろ向きに、事務イスごとぶっ倒れたんだよね。反射的に見たら白目剥いて泡吹いてて、女子も多い事務所だからパニック状態になっちゃって。

すぐに社員が救急車呼んで、Aは近所の病院へ運ばれたらしいけど、その後出勤してくることはなし。

テレアポで営業かけてたのは某CSのチューナーだし、刺すだの死ぬだの物騒なキーワードが出てくるのは常識的にありえない。

Aはどんなお客さんとどんな会話してるんだよ、と。

通話記録(直前の会話分だけ録音してある)も残ってるはずだと思うんだけど、バイト先からは何の説明らしきものはなかった。

で、偶然Aを見かけたんだよね。おとといの飲みの帰り、始発電車の中で。

面白みもない感じの普通の学生って感じだったAが、ガラガラの車内の真ん中で突っ立ったまま、よだれを垂れ流しながら恍惚(こうこつ)の表情で笑ってて、見るにたえなかった。

電話一本で何があったんだろうって急に思いだして、雑文ごめん。

1通の手紙がきた。差出人の名前で検索すると奇妙なことがわかった

去年の暮れ、会社に1通の手紙がきた。

編集プロダクションに勤めている俺への、名指しの手紙だった。中を読むと自分のエッセイを読んで手直しして欲しい事、そして執筆指導をして欲しい事の2点が主な内容だった。

奥付(本の最後の出版社や発行者、編集者などの名前が載ってる部分)で名前でも見たんだろうかと思いながらも、初めての事態に少々不信感を抱きながら返信。

持ち込んでくれれば読むが、その後も個別に指導を続けるのは無理である事をしたためた。

その翌日、宅配便の担当者から宛先に該当する人がいないとの電話を受けた。その言い回しにじゃっかん違和感を覚え、詳しく聞いてみると、その宛先は北関東にある刑務所だった。

同封されていた返信用封筒にしるされていた住所をそのまま書いたのだが、意外な展開に戸惑い、差出人の名前で検索すると傷害事件で逮捕された男の名前だった。

収容された場所がそこであることは、ネットで調べた限り確かなようだったが、すでに出所している人物だったため、誰かの嫌がらせの線をまず疑った。

改めて封筒を見てみると、2つの事に気がついた。

・封筒に書かれていた差出人の住所と、返信用封筒に書かれていたそれが違う場所である事。

・封筒と便箋に使われていたペンが別物である事(筆跡は見た限りでは同一の様)。

2つ目の意図・意味は上手く推測できず、とりあえず誰かにからかわれたような気になり、よせばいいのに封筒の方の住所へ改めて返信をする事にした。

正直怒りの気持ちもあったが、恐怖もあったため、そういう気持ちは表さず、形式通りのビジネスレター的な書き方にした。

その4,5日後返信が届いた。封筒の裏を見ると前回と同じ住所。あの受刑者と同じ名前で届いた事に少々おびえつつ封を開き、次の文を見て血の気が引いた。
「〇〇〇は、もう3年も家に戻っておらず捜索願いを出しているのです。もし居場所をご存知なら、お願いですから教えていただけませんでしょうか。」

ネットで見た限りでは、言い渡された刑期と確定判決の出た時期から考えて、出所は去年の夏辺りのはずだった。特赦・恩赦・仮釈があったにしても3年前は早すぎる。

3年間服役していて家にいないのであれば、捜索願いを出すわけもないし、もし仮に親が知らないうちに息子が服役していたにしても、その捜索願いを受けた警察側で彼の現状は分かるはずだと思った。

同姓同名の別人なのか?それとも他の理由があるのか?

ここで終わらせたい気持ちと、真相を知りたい気持ちに揺れて、俺は、手紙に書かれていた電話番号にかけてみる事にした。

固定電話で市外局番を見る限り、送り元の住所と一致していたし、恐らく母親だと思われる書き手の文は、嘘には思えなかった。聞きたい事は大きく3つ。

・息子さんは過去に傷害事件(実際は併合罪(へいごうざい)であったが詳細ははぶく)で服役していたのか

・もしそうなら出所はいつだったか、また3年より前の足跡は把握しているのか

・彼は文筆活動をこころざしている人間だったのか

いきなりぶしつけな質問ぞろいだったが、こっちも片足突っ込んでるので知りたい気持ちが強かった。

予想通り年配の女性の声が聞こえ、そして質問をぶつけてみた。

〇〇〇は大人しい子で、そんな暴力沙汰なんて考えられません…。3年前と言いましたが…いなくなったのに気づいたのが3年前なんです。

ずっと家にこもりっきりの〇〇〇が、部屋の前に運んだ食事に手をつけなくなり、そういうことは…時々はあったのですが…それが続いて思い切って部屋を覗いてみたらいなくなってて…。

学生時代の連絡網を見て、全員に電話してみたんですけど、誰も知らないって…

頭のいい子ですから作文は好きでしたし、成績も良かったので小説は…部屋の中を見なかったので分かりませんが…いなくなって…

やっと〇〇〇のお友達から手紙が着たと思ってお返事しましたのに、暴力事件だなんてひどすぎます!

もちろん、こちらの経緯と、お聞きしにくい事ですがやむをえずと言う旨は伝えたのだが、徐々に声が上ずってきていた。

非礼を詫び、私も真相が知りたいのですと食い下がり、手紙が本人の物であるかどうか見てもらう話をつけた。

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馬刺しを愛すお洒落なひよこです。

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